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運動麻痺に対する治療戦略と実践⑥ 私たちにできること

脳科学の知見からのまとめ

・脳損傷後の運動機能回復には一次的変化(血流や代謝の改善)と二次的変化(脳の可塑的変化、神経ネットワーク再構築)がある

・この二次的な変化を効率良く知見に基づいて行うのがニューロリハとされ、ニューロリハの観点からは回復のプラトーは存在しない(頻度に依存しネットワークは作られるor退行する)

・ステージ理論では、
 1st.残存した皮質脊髄路の興奮性の賦活(発症〜3ヶ月)
 2nd.皮質ネットワークの再構築(3ヶ月をピーク〜6ヶ月)
 3rd.新しいネットワークのシナプス伝達効率化(6ヶ月〜)

 の3つのステージがあり、この理論では2nd stageの終了する6ヶ月までに麻痺側の随意的な参加を促すことの重要性を強調しています。


・脳地図は使用頻度と質に依存し、可変的。また脳の可塑的変化には他動運動よりも能動的に行うことが重要。

・痙縮は発症後早期の不動による筋線維と変性と、不使用による中枢神経の変化との相互作用により起こる。

・回復過程の調査では、機能回復については 4.5週で80%の回復、3ヶ月でほぼプラトーになる。
 ADL能力は6週で80%の回復、12.5週で95%の回復。

・手指、歩行機能は発症初期〜1ヶ月時の機能の良し悪しが予後にも影響する。

・神経ネットワークの再構築、シナプス伝達の効率化には期間を要するため本人の強い希望がなければ継続は困難。

・機能回復訓練には適応がある。両側性や広範な脳損傷では代替ネットワークによる代行機能が働かない可能性がある。



■実際の臨床での5つのポイント

1.Wish - Focus - Design
患者さんの望みを知り、それに基づいた問題点の抽出と、治療 デザインをしていますか?

2.1人でできる課題の提示
脳の可塑的変化は他動よりも能動的に動くことで促進
出力した方が記憶の定着率も良い(入力の3倍)

自分でできなければ生活で活用できない


3.患者さんが実感でき、再現できること
リハビリの効果判定は患者さん自身が実感できるかどうかが大切です。
またその場の実感だけで、リハビリが終わったら忘れた、できないのではリハビリの意味がありません。
そして実感できたら1人で再現できるところまでセラピストは導く必要があります。
再現のためにはこうしたら上手くいくというルールを学習することが大切です。


4.1task - 1rule と 1day - 1task
セラピストからは簡単に思える課題でも、患者さんにとっては運動機能や注意機能、姿勢制御の影響を受けるために私たちの想像以上に困難な課題を強いられているかもしれません。

セラピストは提示する課題1つ1つに対して、
何の学習を目的としている課題なのか?
この課題ができることでWishにどうつながるのか、を明確にし説明できないといけない
と思います。

目的のない訓練はありません。

目的があるからこそ、 患者さんは集中と熱意を維持できます。
そのためには患者さんの機能的な問題を抽出し、その問題を解決できるものである必要があります。
まずは評価ありきです。

患者さんが上手くいくためのルール(ここに気をつけたら膝折れしない、ここを使うと上肢がスムーズにあがる)はすぐには見つかりません。

課題を実際に行いながら、患者さんの訴えや動き・筋の反応をみながらその患者さんにとってのルールを見つけていきます。その際に脳科学や運動学・解剖学の知識は大きな武器になります

そしてその課題は1つの事柄に注意しながら行うことで1人で達成できるレベルに設定する必要があります。
1つの注意事項でできないのに、それ以上難しくすれば...結果は分かりますよね。

できない課題を繰り返すことは、学習性無力感を生むとともに患者さんとの信頼関係を崩す原因にもなります。

患者さんが課題を上手くできないのは、セラピストの説明不足と課題のレベルが患者にとって難しすぎることが多くあります。

1人で上手くできる課題を見つけ、その課題前後の変化を患者が実感でき、再現できるようになったら今度は病棟や在宅での生活場面へとつなげていきます。

課題における即時効果を生活へとつなげ、AMの効果をPMへ、今日の効果を明日へと維持することが大切です。

私は基本的に自主トレで提示するのは、その日にやった課題で1番反応の良かったもの。最も本人の実感が得られ、再現性のあるものを行ってもらうようにします。
再現するためのポイントをできるだけ1つに絞り、再確認してリハビリを終わります。

これも前述したように1つのことが1人でできないのに、それ以上増やしてもやってくれません。

小学生の宿題やダイエットと一緒ですね。 良くなる実感がなければ1人ではやってくれません。
逆に課題で効果が実感できれば、言わなくても患者さん自らがやってく れたります。

1つの課題で、意識してもらうポイントを1つにする(そのポイントを見つける方がよほど大変ですが...)。
そして見つけたポイントをリハビリ以外の時間でも確認できるように1つの宿題を出す。
まずは1つです。1つでできなければ、2つはできないでしょうし、そもそも課題の設定が高すぎる可能性があります。

また自主トレをやってもらうために「じゃあ病棟でもやっててくださいね」と言うことは大切ですが、負けず嫌いの方であれば「じゃあ今上手くできたのを午後のリハビリの時にも見せてくださいね。できますよね、Aさんなら」と。
家族を大切に思う方であれば「今度奥さんとお孫さんが来た時に見せてあげたいので、それまで忘れないように部屋でもたまに確認しといてくださいね」と言った方が、
目的意識も生まれやすいのではないでしょうか。

患者さんの背景や価値観、さらには課題や会話の内容や表情を踏まえながらやる気スイッチをどう見つけるかはセラピストにとって大切な能力だと思います。


5.量と質
筋活動機会の増加、廃用の予防には動かないよりはどんどん動いた方が良いはずです。
寝ているよりは座り、立った方が。
ただしそれが筋出力や健患側の参加のアンバランスを生む場合、そのアンバランスな状況をより強化する可能性があります。そのアンバランスを改善するためにセラピストの関わりが必要です。

しかしアンバランスが強くなるから動いてはいけない、と活動を制限することは廃用や本人のモチベーション低下につながるリスクも予想されます。活動を制限することと、アンバランスの状態でも動くことについて双方のメリット、デメリットを考える必要があります。

PTの方ではOTが歩行練習をするのを「OTの介助では歩容が崩れるから...」と制限する場合もあるかもしれません。PTの訓練時に介助で上手く歩けたかもしれません。でもその変化がOTの時に持続していないのであれば、学習につながっていないのではないでしょうか。

歩行など動作訓練では介助や徒手的な誘導を行うことがあります。
でもその介入はセラピストが外見上良く見えるように上手く動かしているだけで、 患者さんが「自分で(麻痺側を使って)動くための練習」になっていないのかもしれません。

徒手的な介入が患者さんにとって、(その徒手的な介入がなくなった後の)自分で上手く動くためのルールの獲得につながっていないのであれば、介入の効果があるとは言えないのではないでしょうか?

熊本リハ病院の吉村先生の報告にもあるように、回復期病棟ですら患者さんに十分な活動量を提供できていないというのが現状です。

また脳の再組織化にも量は必要だと強く言われています。

ではリハビリの時間だけ頑張って動けばいいのでしょうか?
それ以外の時間は寝ててもいいのでしょうか?

もちろんそんなことはなく、むしろリハビリ以外の時間の方が大切です。
入院中であれば、病棟での生活は退院後の生活のためのリハーサルの場です。
廃用によりベッドで臥床している方が、 退院後すたすたと動けるか...考えれば分かりますよね。

リハビリは、リハビリ以外の20数時間の病棟や在宅での生活をより有効に使うための準備のために必要だと思っています。リハビリはあくまで脇役です。病棟や在宅生活での量を確保することは大切です。そのためには病棟や在宅で関わる多職種との連携が必要になってきます。


私たちの役割は、病棟や在宅生活において多職種や家族との連携によって確保された活動の機会を、より効果的で効率的な機能改善へとつなげるための準備をすることです。

その準備とは、患者さんが生活場面での麻痺側の参加のためのコツやルールをつかめるよう、患者さんの望みを叶えるための身体の変化の実感を常に積み重ねていくことだと思います。

実感によって心が動きます。

良くなるかもしれないという希望が生まれ、やってみようという自律心が生まれるかもしれません。

では、最後に...


患者さんの望みは何ですか?


最後までお読み頂き誠にありがとうございます。


このシリーズはこれで一度、締めになります。


次のシリーズは何にしようか……

小松の気まぐれでまた何か書きますね(笑)




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